何年も前に、新入社員向けの合同研修で、分刻みで決められた「ロジカルシンキング」のカリキュラムを講師として進行したことがあります。
その丸一日の研修が終わったときに、とてつもない疲労感に襲われたことだけを覚えています。なんだか、フレームワークだけを押し付けたような違和感で、むしろ柔軟な頭の若者たちの頭を、変なロジックで枠にはめてしまったような、そんな違和感でした。
クリティカルシンキング、に至っては、そもそも表現自体がピンときません。直訳して、批判的思考?批判的ってことなの?(英語が苦手)。
そこで僕からの提案は、パフォーマンスを高めるための思考プロセスとして、目的思考、を提案したいのです。
目的を設定する目的は、パフォーマンスを高めたいからです。
僕はひたすら目的を考える方ですが、その原動力は何かというと、「超めんどくさがり」であることです。
できるだけやらなくていいことはやりたくないし、どうせやるなら高い価値を出したいのです。
おかげで、同じ時間を費やすとしても、無駄は徹底的に排除するし、同じことをやるにも目的が設定されているおかげで、欲しいものに手が届く確率が高まっていると思います。
各論はさておき、目的思考のエッセンスを二つ紹介します。
まず一つ目は、『意味付け』です。
同じ活動をするにしても、意味や価値を最大限持たせよう、ということです。
意味付け、は、モチベーションに直結します。ある活動をやる必要があるのかどうかの目安にもなるでしょう。
逆説的に言うと、本来は何かしら目的があって、活動が選ばれるはずなのです。
ですが、いわゆる、活動自体が目的化する、という低パフォーマンスがよく発生します。
わかりやすい問いがあります。
『何のために』です。
例えば、考えてみてください。
『この会議は何のためにやっているのか?』
『この作業は何のためにやるのか?』
『何のためにこの会社に入ったのか?』
『何のために働くのか?』
特に、意味付けのはっきりしない会議は多く見られます。
目的がはっきりしないため、集められている人たちも不適切だったりします。
過去からやられている、という理由でなんとなく実施されていることもあるでしょう。
会議でなくてできることがわざわざ会議の形態で行われていることもあります。
目的思考のエッセンスの二つ目は、『的(まと)』です。
イメージは、アーチェリーやダーツの的です。
的がはっきりしていることで、ずれていた場合に軌道修正することができます。
もっと正確に伝えるならば、的の真ん中までつながる一本の線、といってもよいでしょう。
一本の線となっていることで、着地点までいかずとも、途中で軌道修正が図れます。
問いにするならば、下記のような表現ができます。
『このアポイントの最後にはどうなっていることを目指しましょうか?』
『この提案書は、誰に見せて、その人か結果どうなることを意図していますか?』
『この研修が終わったときに、参加者がどのようになっていればいいですか?』
『あなたの人生は、どのような人生であれば豊かな人生だったと言えますか?』
『今からやるこの作業は、いつまでにどのような品質が求められているでしょうか?』
七つの習慣の第二の習慣で、『Begin with the end in mind』というのがありますが、とても近い概念と言って良いでしょう。
エッセンスを二つ紹介しましたが、いくつか前提があります。
・目的は手放すこともできる
常に目的がなければならないわけではありません。
何が起こるか楽しみたい、なんて場合には、意図的に目的を手放してもいいでしょう。
・目的は自分で設定する
目的がなければ動けない、あるいは、目的を与えてもらえなければ動けない、というのは、もったいないことです。
もし、目的が不鮮明でも、自分で都合よく設定すればよいのです。
あらゆる活動に、自分なりの目的を設定することで、すべてが価値や意味のある活動になるでしょう。
企業のビジョンやミッションは、主に創業者が、意味付けと的をはっきりするために作ったりします。
あなたの会社のビジョンやミッションは、この二つのエッセンスを満たしていますか?
リーダーの皆さん、あなたのチームのビジョンやミッションを示せていますか?